山桜の樹皮を用いた木工品「樺細工」は今でも根強い人気をもっています。歴史は古く江戸時代に、現在の秋田県角館で下級武士の手内職として始まりました。藩主により育まれた技術は明治以降、武士から転じて本格的な樺細工職人になるものも多く、地場産業として根付き今にいたるということです。
「樺細工」の魅力は山桜ならではの樹皮が持つ模様の美しさ、渋い色合いと光沢といえましょう。さらに湿気を防いで丈夫だという特徴は、日常使いの道具として長く愛されてきたゆえんではないでしょうか。茶托やちょっとしたお盆など、見回してみれば案外身の回りでごく普通に使っていたりするものです。
茶筒から茶葉を掬って急須に入れる。ごく日常的な動作ですが、ティーバッグやペットボトルのお茶が普及した現在ではあまり見かけなくなったかもしれません。湿気やすい茶葉を守る茶筒は大切な道具です。「樺細工」の茶筒には蓋も中蓋もピッタリと閉まる手仕事の美しさが感じられます。お茶を入れる一連の動作の中にも手にした道具の感触からフッとしたやすらぎと温もりが生まれます。
桜は爛漫とした花のころばかりが、もてはやされがちですが、樹木としての魅力は他にもいっぱい。そのひとつでも日々の生活の手触りにできれば、なんだか心も浮きたってきませんか。
参考サイト:
<KOGEI JAPAN>