第五展示室のテーマは近代。江戸時代が終わり、明治期の近代社会の出発と発展を、産業と開拓の視点から、製鉄、製糸、北海道開拓によるアイヌ文化の破壊、関東大震災の映像資料など近代史の光と影を紹介。第五展示室で特に目を引くのは、大正から昭和初期の都市の盛り場を丸ごと再現した路地の実物大模型。まるでタイムスリップしたような感覚になるできばえです。
第六展示室は、満州事変以降の現代史がテーマ。歴博のある佐倉城址は、昭和初期には「佐倉歩兵第五十七連隊」の兵舎が置かれ、多くの兵士たちが生活していました。連隊兵舎のの内部居室の実物大模型、そして三八式歩兵銃を手にとってみることができます。日本がいかに戦争へと突き進んでいったかの経緯がわかる写真や文書、ポスター、アメリカの爆撃機B-29の1/5模型、原爆資料、千人針の実物など、胸がつまる展示資料が並びます。
戦後の生活革命のパートでは、日本住宅公団、つまり団地の実物大模型が、「昭和」の時代への懐かしさにいざないます。公害病や環境破壊の悲惨さが生み出した遺物やダムに沈んだ村のパノラマ模型、大衆映画「浮雲」で使用されたセットの実物展示、懐かしのCM映像が流れる映像コーナーと、興味深い展示が続きます。そして日本が生み出したモンスター「ゴジラ」の1984年版造作模型で、常設展示は締めとなります。
出口付近にはみやげ物のほかに、歴史民俗学の一般書籍や、歴博の研究施設がまとめたここでしか手に入らない文献も並ぶ充実した書店が。入館料は安いのですが、いつもここでつい散財してしまうのが筆者のいつものコース。
歴博を出るとその南側には、広大な佐倉城址公園が広がっています。整然と整備された天守閣跡の広場から原生林を思わせる森や沼、そして茶室など、散策にも適しています。城址公園の南端にある「暮らしの植物苑」では、この季節古典菊の特別展示、そして毎月興味深い植物関連の講座も開催されています。
今回ご紹介できなかった第一展示室(石器時代~奈良時代までの歴史)ですが、縄文土器や弥生土器は勿論、竪穴式住居や古墳の長持型石棺の実物大模型、縄文人の復元模型と全身骨格、そして沖ノ島の祭祀場と五号遺跡の復元模型など、興味深い展示が盛りだくさんでした。来年の春、桜が咲く頃リニューアル公開。長い閉鎖期間を終えてどのようにグレードアップするのか、今から楽しみです。
国立歴史民俗博物館佐倉城址公園