ヒョウやライオンやトラ、チーターやヤマネコからイエネコまで、現生するネコ科41種の共通の祖先は、中新世(約2300万年前~530万年前)の前期にユーラシア大陸西部付近で発生し、後期ごろまでユーラシアとアメリカ大陸で繫栄したプセウダエルスス(Pseudaelurus)と考えられています。細身のしなやかな体はヒョウとトラとジャガーを合わせたような独特の斑模様に覆われていました。プセウダエルススから派生したシザイルルス(Schizailurus)を経て、およそ1200万年前には「ネコ科(Felidae)」が登場しました。
そして大型猛獣(ヒョウ亜科)と小型のネコ族との分離の後、600万~500万年前ほどからヒョウ亜科の種の分化がはじまります。現在では絶滅しているホラアナライオン、アメリカライオンなどの現生の最大種をしのぐ大きな種も生まれています。
現生種ではまず、ウンピョウとヒョウ属の分化がはじまり、続いてヒョウ属の中でヒョウ、ライオン、ジャガーの属する系統とトラ、ユキヒョウが属する系統に分かれたとされています。ヒョウ属の捕食肉食動物としての優れたデザイン特性は、その発生当初からすでに完成形に近かったともされ、環境の違いなどに特化して分岐しながらも、そのどの種もが美しく洗練されたハンターとしての特徴を共有しています。
ライオンはアフリカからユーラシア西部、トラはユーラシア東部、ジャガーは中南米、ヒョウはユーラシア大陸とアフリカの各所で、生態系の頂点に位置する強力なアンブレラ種ですが、生息環境の減少や劣化、人間による狩猟圧によってほとんどの種が著しく数を減らし、中でもトラとライオンは絶滅危惧ⅠB(絶滅危機)とされています。さらにトラの数は今世紀に入り全世界の野生種の成獣が2,000~3,000頭程度にまで落ち込み、前回の寅年にあたる2010年に、トラの個体数を12年間で二倍に増やす国際プロジェクトが発足しています。
Wild Tiger Numbers Increase to 3890 | WWF国際的取り組みが効を奏し、20世紀初頭(その当時のトラの推測頭数は10万頭)以来一貫して減り続けてきたトラの数は、1,400頭だったベンガルトラが2,200頭、アムールトラが400頭から550頭などと微増に転じていますが、ボトムネック(一旦激減した種の多様性が失われて、再拡大が困難になる現象)問題もあって未だ予断を許す状況ではありません。
絶滅が懸念されているトラが、アメリカの富裕層によって推計1万頭ほど飼育されているという報告があります。また、動物と触れ合えることを売りにした商業施設では、トラの幼獣を飼育展示し、餌やりや撮影などのイベントが人気ですが、生後3~4か月過ぎるとアトラクションも危険となるため、その個体は排除され、忽然といなくなってしまうんだとか。動物保護団体は育ったトラを殺したり、闇ルートで売買しているのではないかと懸念しています。