24年1月1日に発生した能登半島地震で液状化被害を受けた新潟市は、大きな地震が起きた際に再び液状化するリスクを低減させる“街区単位の液状化対策”を実施する方針だ。江南区の一部の地域では他地域に先駆けて、工事の実施を希望するかどうかを問う意向確認が始まった。
対象区域の住民に届いた意向確認アンケート
新潟市江南区天野中前川原の自治会長・増田進さんの自宅に届いた一通の封書。
街区単位の液状化対策について、新潟市が26年3月末に開始した意向確認のアンケート用紙だ。
増田さんは「本当に意向確認だなという感じがする。内容的には簡単なもの」と、用紙に目を落とした。
能登半島地震の際、新潟市西区や江南区を中心に発生した液状化現象。
新潟市は、被害のあった地域の一部(約250ヘクタール)を対象に、再び大きな地震が発生しても液状化するリスクを低減させるための対策を街区単位で行う方針だ。
新潟市はその実施要件として、1坪あたり5250円の住民負担と地権者全員の同意を求めている。
中原八一新潟市長は3月の定例会見で、「このたび調整が整った江南区天野地区の一部エリアの約180人の土地所有者を対象に、3月26日より意向確認アンケートの郵送を開始する」と発表した。
「対策したい」「検討中」「しなくてよい」3択で問われる意向
新潟市は、事業内容について住民への周知が広がった地域から意向確認に移る考えだ。
能登半島地震の直後から液状化対策の必要性を訴えてきた増田さんの自治会では、新潟市が設定した説明会だけではなく、市の職員を招いた独自の勉強会も開催してきた。
増田さんは、「説明会を開催しても、自治体の50~60%の住民が参加するかしないかというところ。本当に理解が深まっているかは分からないが、前に進んでいる感じはする」と述べた。
アンケートでは、街区単位の液状化対策について知っているかや、「対策を実施したい」「検討中」「実施しなくてよい」という3択で意向が問われている。
費用負担についても「負担額が大きい」と思うかどうかを尋ねている。
「地権者全員の同意」「費用負担」 高いハードルを前に…
3月28日に開かれた自治会の定例総会。
増田さんには、意向確認のアンケートが届くタイミングで自治会長として伝えたい思いがあった。
「人間、人それぞれ考えは違います。違っても良いんです。でも、一刻も早くこの地域を安全・安心にしていきたい、その考えは間違っていないと思っています」
今回の意向確認のアンケートは工事実施の最終的な是非を問うものではないが、地権者全員の同意が必要な工事の実現に向け、街区単位で液状化対策を行う必要性とアンケートへの積極的な回答を呼びかけた。
集会後、住民に話を聞くと、「自分でも色々な方に聞いて結論を出していきたい」という声があったほか、30代男性は「同じ班には高齢の方が多いので、今後争点になってくるのは自己負担の話なのではないか」と見通していた。
対策に賛成だという70代女性は、「まだ工事まで3~4年かかるのではないか。それまで元気でいないといけない」と、工期の長さを心配した。
「街区単位の液状化対策」は「試験施工」のステップへ
新潟市は26年3月末までに、事業の対象となる自治会の58.7%で説明会を実施。今後も説明会を継続しながら、事業に関する周知が広がった自治会から意向確認を実施する。
そして、今後始まるのが試験施工だ。
増田進さんの自治会がある江南区天野地区では、『曽野木ことぶき公園』が地下水位低下工法による試験施工の実施場所に決まっている。
実際に地下水を汲み上げたり、集水管を設置したり、模擬家屋を用意して建物の重さを加えるたりする試験を1年近くかけて行う予定だ。
実際の工法でどれほどの効果が得られるのか、地盤沈下が起きないかなどを検証する。
『曽野木ことぶき公園』での試験施工は、26年6月にも着工される。
試験施工傾斜地では技術レベル高まる見込み
26年3月に開かれた専門家会議『宅地等耐震化対応・対策検討会議』で大塚悟座長は、「天野地区はどちらかと言えば平坦で、地質も他の地域に比べれば非常に分かりやすい。
一方、(今後試験施工の計画を立てる)寺尾地区を始めとした傾斜地では、技術的な課題がより高くなると考えている」と述べている。
新潟市は、西区寺尾地区と黒埼地区で行う試験施工の計画を26年夏に開く予定の次回の検討会議で決定したい考えだ。
試験施工も住民理解の一助に
同じく能登半島地震で液状化被害を受けた富山県射水市では、地下水を低下させる実証実験を25年に始めていて、初日には地元住民もその様子を見守った。
江南区天野地区の増田さんは、この試験施工も住民が対策を理解する重要な機会だと捉えている。
「私もそうだが、工事自体に不安を感じている人もいると思う。工事を実際に見てもらった方がいいのかなと思う。そういう意向は、新潟市に話している」
最速で2028年の対策工事着工を目指す新潟市。
最終的にどれほどのエリアで対策を行うことができるのか…。住民の理解を得ながら進む長い道のりだ。

