避難所へ行く際に必要なものを持ち運ぶ「防災リュック」。限られたスペースの中に、何をどれくらいいれればいいのか?
国際救命救急災害レスキューナースとして、気軽に取り入れられる防災術を発信している辻直美さんの著書『レスキューナースが教える 最強版プチプラ防災』(扶桑社)から、防災リュックに入れておきたいもの、を一部抜粋・再編集して紹介する。
“命をつなぐもの”を最優先に
避難所に行くときに持っていくことを想定して備えておくのが「防災リュック」。
避難所が提供してくれるのはスペースだけ、支援物資も期待できないという前提で3日間サバイブできるだけのものを用意します。
優先すべきは「命をつなぐもの」です。水は生きていくのに必要不可欠ですから、推奨される「1人1日3L」×3日分は最低量だと考えてしっかり準備を。2Lが飲食用、1Lが生活用水です。人は生命維持のため1日に飲み水として1.2Lは必要です。
次に欠かせないのは、排泄と衛生にかかわるもの。避難所のトイレは断水すると汚物が溢れ、すぐに使えなくなります。携帯用トイレもマストと心得て。
全体量が多すぎる場合は、衣類や食品で調整をします。
代用や万能アイテム活用で荷物を減らす
工夫次第でものは減らすことができます。たとえば、下着を3日分持たなくても、おりものシートやナプキンの交換で衛生は保てます。ビニール袋や新聞紙など多用途に使えるアイテムの活用も、防災リュックのスリム化につながります。
リュックの中身は、ジャンルごとに保存袋に入れるのもポイント。水濡れ防止になり、圧縮できるので省スペースにつながります。
【食料】
●普段食べ慣れているレトルト食品やパスタを中心に
防災食ではなく普段食べているものでOK。パスタが比較的多めなのは、ゆでたあとに水にさらす必要がなく、節水調理ができるから。パスタソースはスープやリゾットなどの調味料として使うことも想定。野菜やタンパク質をとれるものを意識的に選んでいます。調理器具を持参しない場合はそのままで食べられるものを準備しましょう。
※食料は必ず保存用袋に入れて!
袋が破けてリュックの中身が汚れても洗う水はありません。食料を無駄にしないためにも保存用ジッパー袋に入れましょう。
【水】
●水は1人9Lが目安
1日3L×3日分で計算。サイズ違いのペットボトルで用意したほうが衛生的かつ使い勝手が◎。重いですが、水は最優先で用意を。
【カトラリー・調理器具】
●箸や簡単な調理器具も準備
温かいものを食べると人は前向きになれるので、メスティンなどの調理器具と燃料なども用意。ラップは皿を汚さないためですが、止血用の包帯などにも使います。
避難所での服装は女性らしさを避ける
【着替え・下着・靴下】
衣類も3日分を用意しています。「これだけ?」と思う方も多いかもしれません。旅行の準備であれば「寒いと困るからカーディガンを入れよう」など、“念のため”を考えます。が、状況が違います。冷えたら重ね着で暖をとるなど、工夫で乗り越えるのです。
また、私は下着類を防災リュックに入れません。100円ショップの使い捨てショーツやおりものシートで対応することを想定しているからです。
荷物を減らすためですが、別の理由もあります。避難所では着替えた下着を洗濯して干す場所がないのと、下着が目につくと「女性がいる」目印になってしまうから。
残念ながら、避難所では性被害への警戒が必要です。その意味で、防災リュックに入れる服は女性らしさのない服であることも重要です。
スマホは不可欠な情報ツール!充電できる用意を
【充電器・ケーブル・イヤホン】
連絡手段でもあり、情報源ともなるスマホ。現在では命をつなぐアイテムといっていいでしょう。しかし、充電がきれてしまったら、なんの役にも立たないただのかたまりになってしまいます。モバイルバッテリーのほか、ケーブル類も防災リュックに用意しておきましょう。
モバイルバッテリーは普段から使い、自分のスマホが何回、充電できるのかを把握しておくことも大切です。イヤホンもマストアイテムですが、有線のものがおすすめ。Bluetoothイヤホンは電池の消費が早く、イヤホン自体の充電が必要となるからです。
避難所には充電スポットが設けられますが人が殺到します。引っかき合いのケンカを目の当たりにしたことがあります。備えておけば、無用な争いを避けることもできるのです。
お口とデリケートゾーンは清潔に
【衛生グッズ】
避難生活は体調を崩しやすく、免疫が落ちているところに、不衛生な状態が続くと病気を招いてしまいます。
特に、口腔とデリケートゾーンの清潔を保てないと、災害関連死につながることが、2024年の能登半島地震でも明らかになりました。衛生アイテムは不快を取り除くだけでなく、命をつなぐアイテムでもあるのです。
水なしでみがける歯みがきセットや圧縮タオル、ふき取り用化粧水、除菌や防臭アイテム、ボディミストなどを備えます。肌に優しい赤ちゃんのお尻ふきは多用途に使えて便利ですが、爽快感とにおい対策のために汗ふきシートも用意しています。
ちなみに、パウダー入りボディシートは数日間入浴できない環境だと、肌がカピカピになってしまうので、避難生活にはおすすめできません。
避難所のトイレは使えない前提で
【排泄グッズ】
避難所となる公民館や学校のトイレは、多くの人が日常的に排泄することを想定していません。そのためつまりやすく、また、すぐに汚れてしまい使用禁止になります。
最近では最初から災害トイレをセットして使う、あるいは、避難所の1室をトイレ部屋にしてそこで災害トイレを使うというケースが増えています。排泄の我慢は健康を害します。携帯用トイレも自分で用意しましょう。
【Point!】リュックは丈夫なものを
防災リュックは15~20kgの重さに耐えるものを。背負いひもが丈夫なアウトドア仕様で、容量は40Lを推奨します。
辻直美
吹田市民病院、聖路加国際病院で勤務後、国際災害レスキューナースとして活動。 国境なき医師団や国際緊急援助隊医療チームにも所属。 東日本大震災や西日本豪雨などでの救助も行う。いままで30カ所以上の被災地にて活動する。今では、防災講演会、幼稚園から大学まで防災の授業も自治体企業の防災コンサルもしている。
