外に人工的な光がない時代、夜とは闇でした。太陽が沈むと、人は外で活動できません。ただ、月が明るい晩だけは、足元やまわりが見えて出歩くことができたのです。農民、旅人、逃亡者、犯罪者…。昼の太陽は全てをあるがままはっきりと浮かび上がらせますが、夜の月は灰色のベールで覆って色を奪い、遠くにあるものを近くに見せたりします。人が悩むのはたいてい夜。月を見ては黒い模様に死を見出したり、満月のもとでは日中動かないものが奇妙に活気づいたり。「夜」を司る月に「死や恐怖や狂気」などが結び付けられることで、「ハロウィンといえば満月」のイメージとなっていったのでしょうか。
けれど同時に、月は「闇に光をもたらすもの」でもありました。恋人たちにとっては、ロマンスの証人、ふたりの時間を見守ってくれる優しい目として。真っ暗な世界にいる人には、暗闇の恐怖に抗う希望の光になったのです。コロナ禍のハロウィンにあらわれる満月は、お祭り騒ぎをしなくてもおうちでお月見して楽しめるようにとの、宇宙からのプレゼントかもしれません。
「お天道さま」はまぶしすぎて見ることができませんが、「お月さま」はゆっくりと眺めて思いをめぐらすことができます。月は人の感情を宇宙へと導いてくれる、ま〜るいとびらなのですね。
10月31日にあらわれるのは、ブルームーンでマイクロムーン(2020年最小の満月)という、記念すべき満月! 今年はぜひハロウィンをお月見で楽しまれてはいかがでしょうか。次回のブルームーンは、2023年8月31日です。
<参考サイト・文献>
国立天文台 アストロアーツ月探査情報ステーション『月 人との豊かなかかわりの歴史』べアント・ブルンナー(白水社)
『知識ゼロからの宇宙入門』渡部潤一 監修(幻冬舎)
『恒星と惑星 手のひらに広がる夜空の世界』アンドリュー・K・ジョンストン監修(化学同人)