1年を振り返る「しずおか総決算2025」。今年も列島を襲った猛烈な暑さ。動物たちも夏バテし
、農作物は高温障害などが深刻化する中、農家も対応に頭を悩ませた。
猛暑列島…静岡市では41.4℃を記録
2025年も猛烈な暑さに見舞われた日本列島。
8月6日には午前10時前の時点で静岡市役所前の気温計が既に39℃を示し、最高気温は国内の観測史上2位タイとなる41.4℃を記録した。
猛暑の影響を受けたのは人間だけではない。
富士宮市にある市の瀬牧場では、牛が暑さでバテてしまったのか肩で息をするなど呼吸が荒くなっていて、市瀬晶菜さんは「耳が落ちて“しゅん”としていて元気がない」と心配そうに見つめた。
また、日本平動物園の飼育員も「本当はおやつを奪い合うくらい元気がいいが、夏バテ気味なのかなという印象を受ける」と話した。
農作物は高温障害に
農作物にも大きな影響が出てしまい、枯れて半分腐った状態のトマトを前に農家の佐野史洋さんは「7月中旬の実がなり始めた頃、暑さも厳しくなってきた頃からだんだん枯れていった」と肩を落とした。
こうした中、いま収穫の最盛期を迎えているのがみかんだ。
今季のみかんについて、静岡市清水区の農家・望月計利さんは「大玉傾向だが、味は順調に美味しく育っている」とホッとした様子を見せる。
夏場の暑さや強い日差しがもたらすみかんの日焼けは近年の悩みの種になっていたからだ。
ミカンの日焼け止めに救世主?
そこで、2025年から取り入れたのがホワイトコートと呼ばれる農薬。
元々はチャノキイロアザミウマという害虫対策の殺虫剤として利用されていたものだが、みかんの日焼け対策としても効果があることがわかり、農薬に登録された。
望月さんによれば、「太陽光を反射して、実の果面の温度が3℃~5℃くらい下がるので日焼けを防止できる」という。
その上で「これ(ホワイトコート)をやるとやらないとでは精神的にも、収入の面でも違う。対策をしていることで日焼けが起きないので生産量が増えるし、廃棄するものが減る」と話す。
その言葉通り、多い年には実ったみかんのうち約3割も廃棄せざるを得なかったが、2025年は1割ほどで済んだそうだ。
これまで日焼け対策といえば枝を切るなど労力のかかる作業ばかりだっただけに、スプレーの噴霧だけで済むホワイトコートは、人手不足や高齢化に悩む農家にとってまさに救世主。
望月さんは「白斑を除去しないと出荷できないのが難点だが、それを除けばやらない選択肢はない」と強調する。
比較的簡易な対策として県も期待
ホワイトコートの活用には県も大きな期待を寄せていて、県農業戦略課の中村明弘 主幹は「簡易な方法で被害を抑えることができれば、農家の生産・収入を安定させることもできるので有効・有望な手段」と述べた。
農水省の統計によれば、2024年のみかんの収穫量は8万8500トンと全国2位を誇る静岡県。
一方で現在のペースで温暖化が進んだ場合、21世紀の中頃には”みかんを作れない土地”になると言われるだけに、新たな日焼け対策に熱い視線が注がれている。
(テレビ静岡)
