地震から子どもたちの命を守る行動が見直されている。
2026年1月、広島県で最大震度4の地震が発生。南海トラフ巨大地震の脅威が迫るなか、従来のマニュアルにとらわれない“減災教育”を広めようと、2月11日、広島市内で勉強会が開かれた。
従来のマニュアルでは思考停止に…
「今までの訓練と全く違う」
「考え方を改めないといけない」
勉強会に参加した防災士や地域支援に携わる人たちから、驚きの声が上がった。
参加者の常識を覆したのは、横浜市のNPO法人減災教育普及協会・理事長の江夏猛史さん。全国で減災教育の普及に取り組み、「マニュアルで思考停止にならない指導をすべきだ」と呼びかけている。
“机の下”で頭は守れるのか?
「突然ですが、訓練です」
講義は“実践”から始まった。
5秒後に大きな揺れが来る想定で、とっさに取った行動…。参加者たちは一斉に机の下へ入り、頭を抱えて丸くなった。学校で繰り返し教わった動きだ。
だが次の問いで空気が変わる。
「その机は壊れないの?それを壊すほどの地震だったら?何から頭を守ったの?」
「上からの落下物」
参加者がそう答えると、江夏さんは天井板を1枚持ってきた。
一人ずつ順番にその重さを確かめる。テレビ新広島の石井記者も頭上で天井板を支えて驚いた。
「うわー!相当重いですね」
ブロック塀2つ分の重さだという。
「これから頭が守られていた人、います?」
会場に沈黙が広がった。
これまで起きた大地震では、天井が崩落する被害が多く発生している。2001年の芸予地震でも、体育館でバレーボールの練習試合が行われている最中に、天井の一部が落下した。過去の災害が語るのは、決まった動きだけでは命は守れないという現実である。
60年前と変わらない避難訓練
「逃げることが大事。だけど僕らは昔から逃げることを習っていない」
江夏さんは、地震の避難訓練は約60年ほとんど変わっていないと指摘する。日本の教育現場では、机の下に入る避難訓練が徹底され、頭を丸めてかがむよう指導されてきた。
実際、小学校で行われた抜き打ち訓練で、教師の指示がない中、運動場にいた子どもたちの多くが校舎へ戻り、机の下に入ったという。安全な運動場にいたにもかかわらず、“習った行動”を優先したのだ。運動場に残ったのはわずか数人だった。
揺れを体験して崩れた常識
勉強会では体験型のプログラムも実施された。
江夏さんが独自に開発したマットで実際の揺れを再現し、“身を守る体勢”を試す。
学校で教わる“頭を丸めてかがむ”ポーズ、ダンゴムシのような体勢でで揺れを体験すると、体勢を保てず仰向けにひっくり返ってしまった。
一方、両手をマットにつけてお尻を落とす“カエル”のようなポーズでは、大きく揺れても踏ん張ることができ、マットから逃げ出すこともできた。
危険を知って「逃げ方」を決める
江夏さんは問いかけた。
「この部屋の中で何が危ない?」
参加者は、ガラス窓の位置や落下しそうな物を確認し始めた。壁の強度を調べる人もいる。
「今いる場所で何が危ないか。そこがわかっていないと逃げ方が決まらない」
再び行われた避難訓練で、机の下に入った参加者は一人もいなかった。逃げた場所は頑丈な壁ぎわ。危険をどう回避するか、自分たちで答えを見つける訓練だ。
今、この講習を全国の子どもたちに広げ、広島でも減災教育の担い手を育成しようとしている。
広島県の「地震被害想定調査報告書」では、16の地震が想定されている。なかでも、2025年10月に更新された想定では、南海トラフ巨大地震が起きた場合、沿岸部で最大震度6強、死者は最大約1万4000人と推計されている。地域の情報を事前に知ることも減災の一つだ。
実際に大地震が来れば、訓練していてもパニックに陥る可能性はある。
江夏さんはこう話す。
「本番の訓練や教育になっているか。地元の力で展開していくような仕組みづくりが大事。みんなの力で広島の減災教育を変えていけたらいいなと思います」
従来の避難訓練を見直し、実践を通して“考える訓練”が求められている。講習で学んだメンバーで「広島ゆらし隊」も結成され、これから広島でも普及活動が広がる予定だ。
(テレビ新広島)

