「防災」が目的の建物とは? 白鬚東アパートから学ぶ 防災見学会
巨大な「防災団地」 建設された理由は
巨大な建物が建てられた理由は、1923年9月1日に発生した関東大震災。関東大震災によって、現墨田区エリアでは多くの死者が出る大惨事となりました。また、1960年代に大きな地震が相次ぎ、東京の防災拠点の整備を主張する中で、当時首都圏で震災が発生した際に甚大な被害想定が出たのが、荒川や隅田川に囲まれた江東デルタ地帯でした。
このエリアは海抜ゼロメートルの所が多く、木造家屋や工場など住宅が密集しているために、火災が起きたら燃え広がりやすく、災害危険度が高い場所とされていました。そこで、東京都は防災目的で再開発を計画し、「白鬚東アパート」が建設されました。
「白鬚東アパート」から学ぶ防災対策
災害発生時には、飛び火を防ぐためにベランダに備えつけられた防火シャッターが一斉に下がる仕組みとなっていて、アパートの棟と棟の間には4つの大きなシャッターがあり、まるで火を遮る要塞のような設備が仕組まれています。アパートのあらゆる場所に、火災時に住民を守るための細やかな造りに目を奪われました。
「火災が発生したら、やはり大事なのは水。」ということで、屋上にも地下にも、いざという時のための巨大な貯水タンクがありました。
「東白鬚公園」から学ぶ防災対策
東白鬚公園サービスセンター サービスセンター長の根岸秀明さんに説明をいただいているところ
災害時に対応できる救護物資倉庫やいざという時にベンチがかまどになる「かまどベンチ」なども設置されていました。災害時に使用するものは、この地区での防災に関するイベントや集まりで積極的に使う機会を増やしているとのことでした。
また、災害時に大事なトイレは、井戸から水が出るような仕組みのマンホールトイレが、園内には80ヶ所以上設置されており、何万と避難されてくる人に対応できるよう対策を行っています。
なくてはならない防災用品の一つであるトイレですが、地震などの災害で実際にライフラインが完全に復旧するまでには、かなりの時間がかかります。1か月以上自宅のトイレが使えなくなることも検討すると、毎回それぞれの過ごす場所からマンホールトイレに向かうのはやはり大変です。各家庭毎に、簡易トイレは備えておくことが必要であるともお伝えしていくべきだと感じました。
「tenki.jp 知る防災」プロジェクト協賛企業の皆様と学んだこと
クリクラ 菅原瑠美さん
見学した防災設備は自分の住んでいる地域にはないものなので、すごいと思った。話を聞いて、防災の意識の高さを感じた。防災に関して若い方の関心は低いように思うが、ここまでの設備があると意識は向上できるのではないかと感じた。
FDK株式会社 藤波大輔さん
電車で現地に向かう途中、この建物だろうなというのがすぐに分かった。誰もが目標にできる目立つ建物というのは、安心感があると感じた。自分が住んでいる場所は、ビルがたくさんあっていざ避難しなければならない場合、どこが適しているのかが分からない。私が住んでいる地域と近い場所なのに防災意識の違いを感じた。
【ご説明いただいた皆様】
・白鬚東地区自治会連合会会長 梅若橋自治会会長 熊木一吉さん
・白鬚東地区自治会連合会 防災担当 白鬚東第二自治会 副会長 佐久間輝雄さん
・東京都住宅供給公社 窓口運営部 白鬚出張所 所長 青栁繁幸さん
・公益財団法人東京都公園協会 東白鬚公園サービスセンター サービスセンター長 根岸秀明さん
・公益財団法人東京都公園協会 公園事業部 防災区部東エリア 担当課長 小笠原明子さん
【取材後記/石榑亜紀子】
これまでも「防災」にまつわる色々なお仕事をさせていただきましたが、今回のように協賛企業の皆様と「防災設備」に触れながら、時間を共有させていただくのは初めてのことで、斬新で学びの多い時間となりました。
これだけの施設を生かすためには、普段から継続して防災訓練に参加して意識を高め、災害時のシチュエーション毎に、日頃から環境を整え、人と人とが協力しあうことが命を守る大切なことだと改めて感じました。貴重な経験をさせていただいたことに感謝し、今後も「防災力」を高めて、情報発信をしていきたいです。
この度はお忙しい中、ご協力をいただきまして、ありがとうございました。
