飛行機が雷に打たれたらどうなるの?雷の影響と対策について解説
雷が発生するしくみ
積乱雲の中で「あられ」や「氷晶(小さな氷のつぶ)」がぶつかり合うことにより、静電気が発生し、雲の中にプラスの電気とマイナスの電気のエネルギーが蓄積されます。蓄積された電気が一定以上になると、雲の中や地面に向かって放電し、これが雷になります。
飛行機が被雷する際の傾向
日本でも年間数百件の被雷が報告されています※。飛行機が被雷する高度にも傾向があり、巡航高度よりも上昇・降下中にあたる高度での被雷が多い傾向にあります。民間機は1,000~20,000飛行時間に1回の割合で被雷していると試算されています※。
また、日本海側は世界的にも珍しい冬季雷の多発地域であり、誘発雷が運航に大きな影響を与えています。
※出典
「被雷危険性予測技術の研究開発」(2021)
「Aircraft Lightning Environment and Related Test Waveforms」(2013)
飛行機の被雷対策(被雷を回避する仕組み)
◆気象レーダー
気象レーダーは電波を放射し、大気中の雲粒や雨粒などに当たって反射された電波を分析する事により、雲や雨などを観測します。活発な積乱雲は被雷する危険性があるだけでなく、強い上昇流による乱気流が発生している可能性があるため、飛行機は積乱雲を避けて飛行しています。また、目視がしにくい夜間においても気象レーダーにより活発な積乱雲を事前に発見し、避けることが出来るため、巡航中は上昇・降下中と比べて被雷は少ない傾向にあります。
飛行機の被雷対策(被雷を軽減させる仕組み)
飛行機の主翼や尾翼の後ろ側に設置されている細長い棒状の装置で、静電気を逃がす放出点としての役割をしています。飛行機が大気中を高速で飛行すると、飛行機に静電気が帯電してしまうため、無線機器への悪影響や雷を誘発する原因となります。
電荷は飛行機の尖っている部分から抜けていく傾向があるため、スタティック・ディスチャージャーを設置することで溜まった電荷を逃がしています。また被雷した際は、電流の放出点としても機能し、機体の他の部分の損傷を防ぐ役割もあります。
◆ライトニング・ストリップ
気象レーダーを搭載している航空機の先端(レドーム)に設置されている棒上の金属で、他の部分の損傷を防ぐための電気の通り道としての役割をしています。
飛行機の胴体は、電気を通しやすいアルミ合金を主体とする金属材料や炭素繊維強化複合材料(CFRP: Carbon Fiber Reinforced
Plastics)に金属のシートやメッシュの層を設けているため、電気を通しやすい構造ですが、気象レーダーを搭載しているレドームは電波を使用する性質上、電気を流しにくい素材で作られており、レドームに被雷すると飛行機は大きな損傷を受けてしまいます。ライトニング・ストリップは、電気の通り道として機能するため、レドームのダメージを軽減させることが出来ます。
雷が運航に与える影響
◆機体への影響
被雷を受けた飛行機は、到着後に機体にダメージがないか、無線機器が正常に作動するかを調べる必要があります。一見ダメージがないように見えても小さな穴が空いている可能性もあるため、検査には時間がかかる場合もあり、後続便の遅延や欠航に繋がります。
◆空港周辺の交通流・離着陸への影響
雷を伴う雲は発達した積乱雲であり、風の急激な変化を伴うダウンバーストが発生したりするため、空港付近に積乱雲がある場合は離着陸が難しくなる場合があります。離着陸が中断されると、着陸待ちのために上空で待機する便が発生したり、地上で離陸待ちをする便が増えるため、遅延に繋がります。また上空で待機する燃料が不足した結果、目的地とは異なる空港に向かわざるを得ない便が発生することもあります。
◆地上作業への影響
雷が空港周辺で観測されている場合は、地上作業者の安全を第一に確保する必要があります。駐機場に誘導する人や貨物の搭降載を担当する人も作業を中断する必要があるため、雷が空港付近に急接近したり、空港の直上にある場合は、地上作業が止まることにより、到着や後続便の遅れが発生します。
まとめ
天気の変化を予想するのは難しいため、余裕をもった予定を立てるのが良いでしょう。
