1年間を振り返る「しずおか総決算2025」。初回は静岡県牧之原市などを襲った国内最大級の竜巻。自宅が全壊する中、再建に向けて動き出した夫婦の歩みを見つめる。
国内最大級の竜巻が発生
2025年9月5日。
台風15号の接近に伴い、静岡県内では各地で線状降水帯が発生した。
静岡市では激しい雨とともに雷鳴が轟き、掛川市などでは1時間降水量が100mm超を記録。
交通網も寸断された。
同じ日の昼過ぎ。
牧之原市と吉田町を襲ったのが国内“最大級”の竜巻だ。
竜巻による被害が特に大きかったのが牧之原市の細江地区。
この地区に住む松下和馬さんと妻・幸代さんは当時、外出していたためケガはなかったが、自宅は屋根が飛ばされ、室内にはガレキが散乱するなど変わり果てた姿に。
和馬さんは「もう住めない。(窓)ガラスもないし、なってしまったものはしょうがない。天災なのでやれることをやるだけ」(9月6日)と肩を落としつつ、気丈に振る舞った。
自宅の再建を決断
全壊した自宅をそのままにしておけば二次災害のおそれもあるため、解体を決断。
同じ場所に再建することを目指した。
「人生の中で激動の1週間だった」(9月12日)と口にした和馬さん。
その横で幸代さんは「新しい家についてお金の面もいろいろ心配はあるのでその辺は2人で一生懸命働きながら頑張っていきたい」と前を向いた。
10月になり解体工事が始まると、幸代さんは「被災により屋根も吹き飛んでしまい住み続けることはできないので、建て替えしか選択肢がないとは思っていたが、いざ家が壊されているのを見ていると、やっぱり悲しい」とポツリ。
それでも「気持ちを切り替え新しく家を建て直して、そこからもう1回頑張ってみるところに気持ちを切り替えたい」と自らに言い聞かせた。
金銭的不安は解消されていないが…
発災から3カ月あまりが経った現在、夫婦は自宅から4kmほど離れたアパートで生活している。
被害を受けた自宅で使っていた時計を見せてもらうと、雨や泥水の跡が残るなど“あの日”の出来事が刻まれていた。
解体工事は終わり、ようやく再建に向けたスタートラインに。
現在はハウスメーカーとの打ち合わせを進めている。
和馬さんは言う。
「極端なこと言えば我が家だけじゃないので、しょうがないとしか言えない。あとは再建するしかない」と。
とは言え、現実問題として金銭面に関する不安は解消されていない。
現在暮らしているアパートは“みなし仮設住宅”として認められたため全額公費負担となり、自宅の解体に要した200万円はやがて市の負担となるものの、その”立替分”がいつ手元に届くかは見通せていない。
日常を取り戻す決意を胸に
それでも、和馬さんは新たな気持ちで新年を迎えようと先を見据え、「とりあえず着実に1個ずつ片付けて、家が完成して、今までと同じように生活できるようになったら、パーっとやりたいなと。それだけを楽しみに頑張ろうと思っている」と笑った。
近年、激甚化、そして頻発化する災害。
日常を取り戻すための長い道のりはまだ始まったばかりだ。
(テレビ静岡)
