空にかかる「天使のはしご」 発生条件は? 美しい放射状の光に迫る
これは、「天使のはしご(梯子)」と呼ばれる現象です。気象学的には「薄明光線(はくめいこうせん)」といい、雲の隙間から差し込む太陽の光が、放射状に広がって見えます。
今回は、この神秘的な光景をつくり出す天使のはしごについて解説します。
天使のはしごができるしくみ
これは、太陽の光が雲の隙間を通って差し込むときに現れます。
では、なぜ光がまっすぐな筋として見えるのでしょうか?
その理由は、大気中の小さな水滴やチリ(エアロゾル)などの微粒子によって太陽の光が散乱されるためです。光の経路が可視化され、筋のように見えるのです。この現象を「チンダル現象」といいます。
天使のはしごが見えるしくみ
これは、電車の線路が遠くに行くほど幅が狭く見えるのと同じ原理です。
遠近法で遠くの線路ほど幅が狭く見える
名前の由来は?
族長ヤコブが夢の中で、空に現れた光の筋で天使が空と地上を行き来する様子を見たと記されており、そこから「天使のはしご」や「ヤコブのはしご」と呼ばれるようになりました。
この現象は、宗教的な絵画にも多く描かれ、光と影のコントラストが神秘的な光景を引き立たせます。
英語では「God ray(神の光線)」や「Angel’s ladder(天使のはしご)」と呼ばれます。
他にも、「光芒(こうぼう)」「レンブラント光線」など様々な呼び方があります。
変化する色や広がり
例えば、ひつじ雲(高積雲)やくもり雲(層積雲)のように、雲に隙間があるときに現れやすく、隙間の幅が大きいほど太い筋になります。
一方で、雲のない快晴時や、空一面を雲が覆っている場合は見ることができません。
また、太陽の高さによって、光の色も変化します。
よく現れる時間帯は、朝や夕方のように太陽高度が比較的低い時間帯です。
太陽が低い位置にあるときはオレンジ色や赤みがかって見え、少し高いと黄金色、さらに高い位置では白に近い色となります。
さらに、大気中のチリや小さな水滴の量によっても見え方は変わります。
これらが多く含まれている大気では、光が散乱しやすくなり、より鮮明な光の筋を見ることができます。
条件が合えば、季節や場所を問わず出合える現象です。
天使のはしごだけじゃない 薄明光線や反薄明光線の魅力
上の空に広がる薄明光線
さらに、その光が空の反対側まで伸びると、「反薄明光線」と呼ばれる現象になります。
これは、太陽とちょうど反対方向にある「対日点(太陽と観測者を結んだ延長線上の位置)」に向かって光が収束して見えることで生じます。
反薄明光線と月
薄明光線と反薄明光線
ここでいう「風根(風の根)」とは薄明光線のことです。
また、反薄明光線は「天割れ(ティンバレ・ティンバリ)」とも呼ばれています。
上向きの薄明光線は、遠くの雄大積雲や積乱雲の影によって現れることがあり、夏から秋にかけては、海の向こうにある台風の外側の発達した雲の一部という場合もあります。
昔の人々は「風の根」で台風の接近を感じ取り、「天割れ」が現れると強い台風が来る兆しとして恐れていました。
遠くの積乱雲によって現れた薄明光線
出現後に必ず荒天になるわけではありませんが、見かけたときは雨雲レーダーなどを利用し、周囲の天気を確認するとよいでしょう。
「天使のはしご(薄明光線)」は、自然が生み出す光のアートです。
朝や夕方に、太陽のある方向に隙間のある雲が広がっていたら、空を見上げて探してみてください。

